桑沢のクラスメイトだった女性と
13年振りに食事をする。奥さんと3人で。
13年前に会った際、
旦那さんの仕事の都合で、
これから何年かスイスで過ごすと。
向こうへ行ったらメールするねと。
それ以来、なんの音沙汰もなく、
そのときに連れてきた小さな姉妹も、
いまや長女は上智大に通い、
英語とフランス語がぺーらぺーら。
次女は受験生で阪大の結果待ち、
とりあえず早稲田には合格したと。
(わかるかなぁ?この「とりあえず」というニュアンス…)
彼女もまた英語で考える方が得意だと。
「もちろん日本語もできるわよ!」
と、そのお母さんはいっていたけれど、
そんなことはぼくにしてみれば基本であり。。
で。
二子玉で呑みおわり、
「じゃこれからウチにくる?」
ということになり、突然、
彼女とその頭の良い姉妹が暮らす
等々力のマンションを襲撃する。
ちなみにその際、
「タクる?」と、お母さんはいった。
また、彼女は「とりあえずビール」のことを、
「とりビ」といっていたし、自由が丘のことは
「がおか」といっていた。どうなんだ?
さて。女性3人が暮らす家。
いっておくけど、ぼくは50近くになったいまでも、
女性に対して幻想を抱きつづけている。
そしてその一部分が、玄関を入り廊下をぬけ、
リビングルームへ入った途端、確実に崩れ落ちた。
(村上春樹なら「損なった」というかもしれない)
そこは整理整頓が苦手な部員の部室。
もしくは、
整理整頓が苦手な人が暮らす部屋を、
美術スタッフやコーディネーターが計算してつくりだした
テレビドラマのセットのようだった。
(実際、耳の垂れたウサギが奥の部屋からのそのそと
出てきたりした。ぼくは耳の垂れたウサギを初めてみた)
いずれにせよ、
整理整頓が苦手な親子であることは間違いない。
でも、
雑然としているけれど、決して悪くない。
ぼくたちを出迎えてくれたのは、
13年前に7歳だった長女だった。
「りょうたくん」
と、20歳になった彼女はいった。
13年振りに会った母親の友人の、
白いヒゲをはやしたおっさんに向かい、だ。
なんてフランクなんだ!
でももちろん悪くない響きだ。
大型テレビはCSチャンネル。
そこには細身の男の子がギターをかき鳴らし
歌っている映像が流れている。
そこにお風呂から出てきた次女が
頭をタオルで拭きながら登場。
テレビの映像は、彼女の好きな「サカナクション」だという。
サカナクション?
サカナくんじゃないのかよと、
酔っ払いのおっさんは心のなかで想う。
ここに、クラスメイトの女性と、
その子供である美しく頭の良い姉妹と、
これまた美しい奥さんが揃った。
そしてなにに対してだかはよくわからないけれど、乾杯。
(もうぼくは酔っ払っているのだ)
その後、とりとめのない会話を。
彼女たちに屈託はなく。
でも。
ソファに座る姉妹は
常にヒザにMacBook Proをのせ、
パタパタとキイボードを叩きながら、
ぼくに向きあっている。
仄明るいふたつのアップルマーク。
といっても、会話を拒絶している雰囲気はゼロで、
ただ自然にMacBookと一体化しているというだけであり、
しっかりぼくたちの話も聞くし、自分たちも話す。
指先が常になにかを探し求めているだけ。
普段、ジェネレーションギャップを感じる機会が
あまりないぼくだけれど、少なからず感じざるを
得なかった夜の話。
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